よくわからない横文字があなたの会社のデジタルを駄目にしているのかもしれない
デジタルマーケティング業界ってやたらと単語が多いですよね。「御社のSEMのKPIはCPAとROIとROASのどれですか?」「あー、日時ではCTRとCPA見てて、月次ではARPPUとARPU、後クオーターで30daysLTV見てROI出してます」みたいな会話は普通にあります。
ところで、私は問いたい。
みんなそんなにちゃんと理解しているのか?と。
私も新卒は外資系企業で、部署もGBOの中のSMBの中のSBSにいたので、割と耐性がありますけど、それでも時々、よくわからない単語というのは出てきます。
この前「EFOってどうされてますか?」と聞かれて「あー、今はちょっと手を伸ばせてないんですよね」といかにもそれは検討しました感を出して答えたんですが、あとでググったところ「エントリーフォーム最適化(Entry Form Optimization)」でした。
知らなかった……。
こういうことは、結構あります。
そういう時に「ちょっとそれどういう意味ですか?」とは聞きづらい。この業界がそれなりに長い僕でもそうなので、新しく担当になった方とかだと、余計そうじゃないでしょうか。
特に、「広告は運用代理店に任せている」「分析は担当者に一任」というようなケースだと、意外と知らなかったり、間違って理解している単語があるかもしれません。
「CPA(コンバージョン単価)」を普段、我々は当たり前の知識のように言っているけど、普段運用をしないような事業者の方がその意味をきちんと肌感的に理解されているでしょうか(例えばCTR(クリック率)が1%落ちるということがどれくらいのインパクトなのか、とか)。
CPAは費用÷コンバージョン数だよね、ということまではわかっていても、「コンバージョンと一口で言っても単価の違いがあるよね」「継続率の違いがあるよね」「CPAが多少上がってもコンバージョンを増やしたほうがいいケースもあるよね」といった、ある程度暗黙の了解になっている部分は全く語られていないはずです。
そういった語られざる部分が、略語にした時に、抜け落ちてしまうのではないでしょうか。
ちょっとずれるけど、「働き方改革」とか「女性活躍」みたいなスローガンも似たようなところがありますよね。
専門家が語らないこと
時々クライアントと代理店のミーティングに同席することもあるのですが、当たり前のように横文字を使われると、あまり知識のないクライアント側が黙ってしまうことも少なくありません。
詳しい人はどうしても「これはわかっているだろう」という前提で進めてしまうがゆえに、基礎的な部分についてはおざなりになりがちなんですよね。
単語が通じていれば、反論したり質問したり出来ても、単語自体がわからないと「よくわからないから任せておこう」となってしまうのも当然でしょう。
説明するのがめんどくさい部分を、横文字の短縮言葉にすることで、なんとなくごまかしている、という側面はないでしょうか。
逆に言うと、単語さえ使っていればなんとなく中身のあることが話せているような感じが出てしまう、という風潮があります。
「エンゲージメント率が上がった」とか「CPAが下がった」と言った時、結局それが大枠のマーケティングの中でどういう意味を持つのか、という点について、どの程度合意ができているのか、ということです。
本を書いてみて思ったこと
本を書いてみてわかったことなんですが、いわゆる業界の単語を使わずにきちんとマーケティングについて説明しようとすると、結構大変です。
独自の単語や略称というのは「わかった感」を醸成させるのに重要なのですが、本質的にお互いの理解が進んでいるかと言うと微妙なところがあって、特にこの点はクライアントとエージェンシー(広告代理店・運用代理店)・コンサルタントとの間で顕著なのではないでしょうか。
少なくとも、デジタルを主戦場にする方々が安易に使っている単語が本当にクライアント側でも理解できているのか?ということを問いかけていかない限り、本質的な意味で協業というのが難しいのではないか、と考えている昨今です。
そういう意味では、翻訳作業と言うか、噛み砕いてお互いに肌感を合わせていく作業というのが結構重要なのかな、でもそれすごい難しいな、と感じる今日このごろです。
余談
あえていいますけど、難解な用語を使いまくるから門外漢には凄そうに見えていても、その道の人から見たら大したことを言っていない、という人は結構どの分野でもいるんじゃないでしょうか。
わかりやすすぎるとなんか凄そうに見えない、みたいな。逆もあるんでしょうけどね。
よくわからない横文字があなたの会社のデジタルを駄目にしているのかもしれない
デジタルマーケティング業界ってやたらと単語が多いですよね。「御社のSEMのKPIはCPAとROIとROASのどれですか?」「あー、日時ではCTRとCPA見てて、月次ではARPPUとARPU、後クオーターで30daysLTV見てROI出してます」みたいな会話は普通にあります。
ところで、私は問いたい。
みんなそんなにちゃんと理解しているのか?と。
私も新卒は外資系企業で、部署もGBOの中のSMBの中のSBSにいたので、割と耐性がありますけど、それでも時々、よくわからない単語というのは出てきます。
この前「EFOってどうされてますか?」と聞かれて「あー、今はちょっと手を伸ばせてないんですよね」といかにもそれは検討しました感を出して答えたんですが、あとでググったところ「エントリーフォーム最適化(Entry Form Optimization)」でした。
知らなかった……。
こういうことは、結構あります。
そういう時に「ちょっとそれどういう意味ですか?」とは聞きづらい。この業界がそれなりに長い僕でもそうなので、新しく担当になった方とかだと、余計そうじゃないでしょうか。
特に、「広告は運用代理店に任せている」「分析は担当者に一任」というようなケースだと、意外と知らなかったり、間違って理解している単語があるかもしれません。
「CPA(コンバージョン単価)」を普段、我々は当たり前の知識のように言っているけど、普段運用をしないような事業者の方がその意味をきちんと肌感的に理解されているでしょうか(例えばCTR(クリック率)が1%落ちるということがどれくらいのインパクトなのか、とか)。
CPAは費用÷コンバージョン数だよね、ということまではわかっていても、「コンバージョンと一口で言っても単価の違いがあるよね」「継続率の違いがあるよね」「CPAが多少上がってもコンバージョンを増やしたほうがいいケースもあるよね」といった、ある程度暗黙の了解になっている部分は全く語られていないはずです。
そういった語られざる部分が、略語にした時に、抜け落ちてしまうのではないでしょうか。
ちょっとずれるけど、「働き方改革」とか「女性活躍」みたいなスローガンも似たようなところがありますよね。
専門家が語らないこと
時々クライアントと代理店のミーティングに同席することもあるのですが、当たり前のように横文字を使われると、あまり知識のないクライアント側が黙ってしまうことも少なくありません。
詳しい人はどうしても「これはわかっているだろう」という前提で進めてしまうがゆえに、基礎的な部分についてはおざなりになりがちなんですよね。
単語が通じていれば、反論したり質問したり出来ても、単語自体がわからないと「よくわからないから任せておこう」となってしまうのも当然でしょう。
説明するのがめんどくさい部分を、横文字の短縮言葉にすることで、なんとなくごまかしている、という側面はないでしょうか。
逆に言うと、単語さえ使っていればなんとなく中身のあることが話せているような感じが出てしまう、という風潮があります。
「エンゲージメント率が上がった」とか「CPAが下がった」と言った時、結局それが大枠のマーケティングの中でどういう意味を持つのか、という点について、どの程度合意ができているのか、ということです。
本を書いてみて思ったこと
本を書いてみてわかったことなんですが、いわゆる業界の単語を使わずにきちんとマーケティングについて説明しようとすると、結構大変です。
独自の単語や略称というのは「わかった感」を醸成させるのに重要なのですが、本質的にお互いの理解が進んでいるかと言うと微妙なところがあって、特にこの点はクライアントとエージェンシー(広告代理店・運用代理店)・コンサルタントとの間で顕著なのではないでしょうか。
少なくとも、デジタルを主戦場にする方々が安易に使っている単語が本当にクライアント側でも理解できているのか?ということを問いかけていかない限り、本質的な意味で協業というのが難しいのではないか、と考えている昨今です。
そういう意味では、翻訳作業と言うか、噛み砕いてお互いに肌感を合わせていく作業というのが結構重要なのかな、でもそれすごい難しいな、と感じる今日このごろです。
余談
あえていいますけど、難解な用語を使いまくるから門外漢には凄そうに見えていても、その道の人から見たら大したことを言っていない、という人は結構どの分野でもいるんじゃないでしょうか。
わかりやすすぎるとなんか凄そうに見えない、みたいな。逆もあるんでしょうけどね。
女性向けマーケティングを絶対に成功させる方法(と、マーケティングにおけるジェンダーバイアスの話)
先日、このような記事を書いたところ、多くの人にご覧いただきました(ありがとうございます)。
Instagramと同じように、「女性向けマーケティング」について聞かれることも多くありますが、そんなの僕に聞いてどうするんだという話ですよね。
ということで、二度と僕にそういう相談が来ないように、女性向けマーケティングがことごとく失敗する理由である「マーケティング業界を蝕んでいるジェンダーバイアス」の問題について書きます。
あ、女性向けマーケティングを成功させる方法は、一番最後に書いてありますので、読みたかったらどうぞスクロールしてください。長いので。
「女性向けマーケティング」がことごとく炎上する理由
近年、女性を扱ったコマーシャルや企業プロモーションが、強い批判を受けるケースが増えています。
男性向けの商材だけではありません。女性をターゲットにした商材でも、同じようなケースが多発しています。
これらに関しては、様々な形で(女性の側からも)擁護する意見がありますし、「このCMは問題ない」という意見を聞いたことも少なくありません。
しかし、いずれにしても、大きな批判を産んでしまうようなクリエイティブが多発していることも事実です。
エンパワメントを重視する海外、「かわいくならなきゃ」の日本
海外と比較すると、その差は明確です。下記2つのキャンペーンはあまりにも有名ですが、女性であることを肯定する内容で、高い評価を得ました。
ご紹介したものだけではありません。
近年、「エンパワメント」という考え方が浸透し、とりわけ女性をターゲットにした商材においては、エンパワメントなくしてクリエイティブが成り立たないほどです。
例えば、イギリスではすでに広告基準協議会(Advertising Standards Authority)という団体が、性差別的表現を規制することを発表しています。
もっとキレイにならなきゃ
もっと化粧をしなきゃ
もっと可愛くならなきゃ
という表現が多用されています。
マネジメント層が「炎上」を過小評価している?
本来ブランドマネジメントを考えている企業であれば、これは極めて深刻な事態であるはずです。
自社の事業にクリティカルな「ブランド」を毀損するような炎上が、何故起こってしまうのでしょうか。
海外の事例を見てみます。例えば、H&Mが、一部オンラインストアで、黒人のモデルに対して「サル」などと書かれたシャツを販売していた件です。
多数の著名人から「もうH&Mとは仕事をしない」などとステートメントを出され、販売計画にまで影響をするほどでした。要は無茶苦茶大事になったわけです。結局、幹部が謝罪することになりました。
しかし、これはあくまで担当者レベルの話で、大きな予算を組まれたキャンペーンでここまで炎上するというのは、欧米では考えづらいでしょう。
日本は、ビッグバジェットのキャンペーンですら、時々炎上してしまう、という点において海外とは一線を画しています。
男性マネジメント層に最適化されていくクリエイティブ
男性差別、と思われる広告もあります。
しかし、炎上する内容は、お金を持っていないやモテない男性を馬鹿にしたり、「イケてないおっさん」的なものを揶揄したりするものが多く、自分がイケてて金持ちだと思っている人を批判するようなものは多くありません。
つまり、あくまで男性社会というカーストの中で下位の人を叩くものです。
例えば、消臭剤や芳香剤のCMで加齢臭を気にするのは、若くてかっこいい男性だったり、焼肉食べたあとだったり、野球をやった後の高校生だったりしますよね。
「会議で偉そうなことを言っている社長からも加齢臭が……」みたいなCMは見たことありません。まあCMもたくさんあるので、どこかにあるかもしれないですが(予防線)。
と考えると、日本の広告表現、あるいはクリエイティブというのは概ね、「クライアントである大企業の、男性マネジメント層に最も気に入られそうな表現」が使われているのではないか、という仮説が成り立ちます。
ちなみに、僕は「女性が男性上司に容姿を馬鹿にされて『変わらなきゃ』と気づく」というストーリーを見たとき、いかにもクライアントの偉い人が喜びそうなファンタジーだなーと思いました。
そもそも女性経営者が少ない日本
一つの原因は、女性のマネジメント層が少ないことに有ります。例えば、先ほどご紹介した Unilever 社のボードメンバーには、二名の女性がいます。
一方、日本の女性取締役比率は先進国では最低クラスです。東京商工リサーチによると、6割の上場企業で女性役員はゼロ、全体では3.8%にとどまっています。
フランス、ノルウェー、オランダ、アイスランド、スペインなどではすでにクオータ制(取締役会の中に一定数の女性を登用する)を義務付けており、カリフォルニア州でも女性の取締役を義務化する法案が話題になりました。
人口の50%が女性である以上、本来、男女のリーダーは人口比に従うのが自然でしょう。
意思決定が現場に降りてこない
もう一つの原因は、意思決定が現場に降りてこないことです。
特に、権限委譲が行われず、上の承認が必要な組織であれば組織であるほど、その「上」に最適化したクリエイティブが増え、思い切ったキャンペーンが打ちづらいのが現状でしょう。
これは、結局のところ、あらゆるマーケティング・コミュニケーションにおいて共通する問題といえます。
つまり、実際にそれを見る人・使う人と、その決済を下ろす人の間に大きな乖離があり、それが解消されていないことこそ、日本の本質的な問題点であるといえます。
つまり、これらを総合すると、
マネジメント・リーダーシップが多様性を失い、均質化している
マネジメントが、現場や顧客を理解できていると思い込んだまま、権限委譲を怠っている
この二つが、日本のマーケティングのブレークスルーを阻んでいるといえるのではないでしょうか。
バイアスの先に、新しいマーケットがある
今回はジェンダーの話に絞りましたが、決してこの問題はジェンダーだけの話ではありません。
近年、「○○女子」など、「女性はこんなことやらないだろ」という業界に女性が多数訪れたり、「新宿ゴールデン街」のように、日本人には思いもつかないような場所が観光名所になっていたり、というケースが増えています。
また、インフルエンサー(Instagramer、あるいはYouTuberを含め)が影響力を増していますが、これも「ユーザーに極めて近い当事者」が宣伝するから意味があるわけです。
当事者だからわかること、というのは確かに存在していて、それを理解するためには当事者に話を聞くしかないのです。
理解できないことを理解しよう
多分、私には永遠に今の10代のことはわからないでしょう。女性のこともわかりません。10代の女性向け化粧品のクリエイティブを作れ、と言われたらかなり困ると思います。
でも、それは当たり前のことです。私にはそれが理解できない、ということを理解していればいいのです。
多様性とは、他人の目でものを見るということであり、多様性なきマーケティングは、結局のところ独りよがりになってしまいます。
「他人の目」を失ってしまったこと、自分はなんでも理解できると驕り高ぶった決済権者が多いことが、日本のマーケティングを硬直化させ、このような炎上事例を多発させている原因ではないのでしょうか(自戒を込めて)。
最後に
女性向けマーケティングを成功させるには、もし自分が当事者でなければ、当事者(か、当事者に出来るだけ近い人)に決めてもらい、それを理解しようと務めること、そして究極的には、自分には理解できないということを理解することが重要です。
うぬぼれないこと、大事。
女性向けマーケティングを絶対に成功させる方法(と、マーケティングにおけるジェンダーバイアスの話)
先日、このような記事を書いたところ、多くの人にご覧いただきました(ありがとうございます)。
Instagramと同じように、「女性向けマーケティング」について聞かれることも多くありますが、そんなの僕に聞いてどうするんだという話ですよね。
ということで、二度と僕にそういう相談が来ないように、女性向けマーケティングがことごとく失敗する理由である「マーケティング業界を蝕んでいるジェンダーバイアス」の問題について書きます。
あ、女性向けマーケティングを成功させる方法は、一番最後に書いてありますので、読みたかったらどうぞスクロールしてください。長いので。
「女性向けマーケティング」がことごとく炎上する理由
近年、女性を扱ったコマーシャルや企業プロモーションが、強い批判を受けるケースが増えています。
男性向けの商材だけではありません。女性をターゲットにした商材でも、同じようなケースが多発しています。
これらに関しては、様々な形で(女性の側からも)擁護する意見がありますし、「このCMは問題ない」という意見を聞いたことも少なくありません。
しかし、いずれにしても、大きな批判を産んでしまうようなクリエイティブが多発していることも事実です。
エンパワメントを重視する海外、「かわいくならなきゃ」の日本
海外と比較すると、その差は明確です。下記2つのキャンペーンはあまりにも有名ですが、女性であることを肯定する内容で、高い評価を得ました。
ご紹介したものだけではありません。
近年、「エンパワメント」という考え方が浸透し、とりわけ女性をターゲットにした商材においては、エンパワメントなくしてクリエイティブが成り立たないほどです。
例えば、イギリスではすでに広告基準協議会(Advertising Standards Authority)という団体が、性差別的表現を規制することを発表しています。
もっとキレイにならなきゃ
もっと化粧をしなきゃ
もっと可愛くならなきゃ
という表現が多用されています。
マネジメント層が「炎上」を過小評価している?
本来ブランドマネジメントを考えている企業であれば、これは極めて深刻な事態であるはずです。
自社の事業にクリティカルな「ブランド」を毀損するような炎上が、何故起こってしまうのでしょうか。
海外の事例を見てみます。例えば、H&Mが、一部オンラインストアで、黒人のモデルに対して「サル」などと書かれたシャツを販売していた件です。
多数の著名人から「もうH&Mとは仕事をしない」などとステートメントを出され、販売計画にまで影響をするほどでした。要は無茶苦茶大事になったわけです。結局、幹部が謝罪することになりました。
しかし、これはあくまで担当者レベルの話で、大きな予算を組まれたキャンペーンでここまで炎上するというのは、欧米では考えづらいでしょう。
日本は、ビッグバジェットのキャンペーンですら、時々炎上してしまう、という点において海外とは一線を画しています。
男性マネジメント層に最適化されていくクリエイティブ
男性差別、と思われる広告もあります。
しかし、炎上する内容は、お金を持っていないやモテない男性を馬鹿にしたり、「イケてないおっさん」的なものを揶揄したりするものが多く、自分がイケてて金持ちだと思っている人を批判するようなものは多くありません。
つまり、あくまで男性社会というカーストの中で下位の人を叩くものです。
例えば、消臭剤や芳香剤のCMで加齢臭を気にするのは、若くてかっこいい男性だったり、焼肉食べたあとだったり、野球をやった後の高校生だったりしますよね。
「会議で偉そうなことを言っている社長からも加齢臭が……」みたいなCMは見たことありません。まあCMもたくさんあるので、どこかにあるかもしれないですが(予防線)。
と考えると、日本の広告表現、あるいはクリエイティブというのは概ね、「クライアントである大企業の、男性マネジメント層に最も気に入られそうな表現」が使われているのではないか、という仮説が成り立ちます。
ちなみに、僕は「女性が男性上司に容姿を馬鹿にされて『変わらなきゃ』と気づく」というストーリーを見たとき、いかにもクライアントの偉い人が喜びそうなファンタジーだなーと思いました。
そもそも女性経営者が少ない日本
一つの原因は、女性のマネジメント層が少ないことに有ります。例えば、先ほどご紹介した Unilever 社のボードメンバーには、二名の女性がいます。
一方、日本の女性取締役比率は先進国では最低クラスです。東京商工リサーチによると、6割の上場企業で女性役員はゼロ、全体では3.8%にとどまっています。
フランス、ノルウェー、オランダ、アイスランド、スペインなどではすでにクオータ制(取締役会の中に一定数の女性を登用する)を義務付けており、カリフォルニア州でも女性の取締役を義務化する法案が話題になりました。
人口の50%が女性である以上、本来、男女のリーダーは人口比に従うのが自然でしょう。
意思決定が現場に降りてこない
もう一つの原因は、意思決定が現場に降りてこないことです。
特に、権限委譲が行われず、上の承認が必要な組織であれば組織であるほど、その「上」に最適化したクリエイティブが増え、思い切ったキャンペーンが打ちづらいのが現状でしょう。
これは、結局のところ、あらゆるマーケティング・コミュニケーションにおいて共通する問題といえます。
つまり、実際にそれを見る人・使う人と、その決済を下ろす人の間に大きな乖離があり、それが解消されていないことこそ、日本の本質的な問題点であるといえます。
つまり、これらを総合すると、
マネジメント・リーダーシップが多様性を失い、均質化している
マネジメントが、現場や顧客を理解できていると思い込んだまま、権限委譲を怠っている
この二つが、日本のマーケティングのブレークスルーを阻んでいるといえるのではないでしょうか。
バイアスの先に、新しいマーケットがある
今回はジェンダーの話に絞りましたが、決してこの問題はジェンダーだけの話ではありません。
近年、「○○女子」など、「女性はこんなことやらないだろ」という業界に女性が多数訪れたり、「新宿ゴールデン街」のように、日本人には思いもつかないような場所が観光名所になっていたり、というケースが増えています。
また、インフルエンサー(Instagramer、あるいはYouTuberを含め)が影響力を増していますが、これも「ユーザーに極めて近い当事者」が宣伝するから意味があるわけです。
当事者だからわかること、というのは確かに存在していて、それを理解するためには当事者に話を聞くしかないのです。
理解できないことを理解しよう
多分、私には永遠に今の10代のことはわからないでしょう。女性のこともわかりません。10代の女性向け化粧品のクリエイティブを作れ、と言われたらかなり困ると思います。
でも、それは当たり前のことです。私にはそれが理解できない、ということを理解していればいいのです。
多様性とは、他人の目でものを見るということであり、多様性なきマーケティングは、結局のところ独りよがりになってしまいます。
「他人の目」を失ってしまったこと、自分はなんでも理解できると驕り高ぶった決済権者が多いことが、日本のマーケティングを硬直化させ、このような炎上事例を多発させている原因ではないのでしょうか(自戒を込めて)。
最後に
女性向けマーケティングを成功させるには、もし自分が当事者でなければ、当事者(か、当事者に出来るだけ近い人)に決めてもらい、それを理解しようと務めること、そして究極的には、自分には理解できないということを理解することが重要です。
うぬぼれないこと、大事。
栄光なき起業家たち#1 展示会の三日前に契約解除。ペットの幸せを夢見た起業家は、何に躓いたのか?
中目黒のカフェで、彼女は愛犬のじゅんくん(1歳半)と共にインタビューを受けてくれました。明るく、ハキハキと喋り、事業を清算したという悲壮感は全くありません。
「切り替えるのが得意なんです」
彼女はそう言います。
ソウル出身。高校までを韓国で過ごし、早稲田大学政治経済学に進学。その後、外資系コンサルティングファームに就職し、起業。
トリリンガルで、容姿端麗。ロースクールに通い弁護士を目指す。はたから見れば、すべてを手に入れたパーフェクト・ウーマンです。
一見、成功を約束されていたように見えた彼女は一体、何を目指し、なぜ挫折したのでしょうか?
ー もともと、なぜ起業しようと思ったんですか?
私、小さい頃からビル・ゲイツになりたかったんです(笑)
ー というと……
もともとは外資系コンサルティングファームにいて、死ぬほど働いてました。それはそれですごくやりがいがあったんですが、体調を崩したときに、ずっとコンサルでやっていくかどうか考えたんです。
生まれた以上、名前世界の中に残したいなと思って、それはサラリーマンでは無理だなと思って。
ー この事業にたどり着くまでは、どういう経緯があったんでしょうか?
いろいろな事業をトライ・アンド・エラーしていました。ただ、どれもしっくり来なくて
。自分事じゃないと、なかなかゴーサインが出なかったんです。
ちょうどその時じゅん(愛犬)を迎えたんですが、その時にいろいろ勉強して、愛玩動物飼養管理士の資格を二級を取ったんです。
ー すごいですね(笑)
でしょ(笑)
ペットを飼っている人も増えているけど、知識がないだけでも、ペットにとって良くないことをしてしまうんです。そういう事実に気が付きました。
それで、ペット向けのサービス、ということで事業の方向性が固まったんです。
ー 株式会社MORESQUは、何を目的とした会社だったのでしょうか?
ペット向けのIOT、スマート体重計を企画・開発していました。
ー スマート体重計?
犬を飼ったことがある方なら分かると思うんですが、ワンちゃんはなかなか体重計に乗ってくれないんです。
大型犬にもなると、そもそも抱っこして乗せるのが大変で。私、大型犬を体重計に乗せたとき、一度ヘルニアになったことがあるくらいです(笑)
トイレをしながら、無理なく体重を図ってくれるデバイスというのが、このスマート体重計のコンセプトでした。
MORESQUは韓国の企業と一緒に作った合弁会社なのですが、この製品の企画・開発を行って、量産化を目指していました。
ー 外国人として起業したわけですが、苦労したことは?
もともと就労ビザは持っていたんですが、日本で会社を作るときは、経営管理ビザに切り替えなくてはいけないんですね。その条件がものすごく厳しいんです。一割くらいしか取れなくて。
ー キツいですね。
そうです。大変なんです(笑)。
彼らは、日本でこのデバイスがヒットすれば、韓国でも販売できると考えていたようです。なので、まず日本でやろうと。
それなら一緒にやろうということで、彼らと合弁会社を作ることにしました。
ー 林さんが、日本での販売を担当するという感じですか?
いえ、企画も一緒にやっていました。エンジニアは向こうにいたんですが、企画までかなり一緒になって、プロトタイプを作るところまではこぎつけたんです。
ー それなのに、なぜ事業を精算することになったんでしょうか?
クラウドファンディングも行って、初期の開発に必要な目標金額は達成していました。それを元に、モックアップは作って、インターペットという、日本では最も大きいペットの展示会に出せるところまではこぎつけたんです。
ところが、展示会に出す三日前に契約を解除すると一方的に通達してきたんです。
ー 一方的に?
そうです。そもそも、展示会でメディアやサプライヤーに見つけてもらい、その結果次第で、量産するか決めよう、という取り決めになっていたんですね。
それなのに、なぜかその三日前に、契約を解除したい、量産がコスト的に難しい、と言われて。その日はずっと号泣していました(笑)
ー 展示会はどうなったんでしょうか?
主催の方に相談したんですが、向こうもとにかく穴が空くことだけはやめてほしい、ということだったので、空いたスペースで撮影会を行うことにしました。
知り合いのカメラマンさんに片っ端から連絡をして、予定が付く人を探して、ペットと一緒に写真を取れるようなスペースを整えて。
契約解除から三日しか時間がなかったので、搬入の日に一人でビッグサイトに行ったら、周りはデコレーションだけでものすごいお金をかけているんです。
その横で、契約解除した会社の看板を泣きながら剥がして。風船もデコレーションもないので、家の壁に貼ってた愛犬の写真を貼って(笑)
ー 撮影会は盛り上がったんでしょうか?
ただ写真を撮るだけでは誰も来ないことはわかっていたので、いろいろ工夫をしました。例えば、従来はメールアドレスを聞いて、後からデータを購入するか選んでもらう形式でした。
でも、それではなかなかその場の雰囲気で売れません。
そこで、その場ですぐに、撮った写真から選んで、後から加工したデータでお送りするようにしたところ、やはり皆さん我が子が可愛いのか、何枚も買ってくれる方も多くいらっしゃって(笑)
それから、知り合いの雑誌編集の方にお電話をして、グランプリを取った子を雑誌で載せるようなタイアップが出来ないか?と伺ったところ、「いいよ」と快諾してもらって。
結果的には、大盛況になって、水も飲む暇もないほどでした。
ー 契約上は問題なかったのでしょうか?
東京都のスタートアップハブ、という制度で、弁護士さんに契約書は見ていただいていました。そもそも、自分一人でやらざるを得なかったので、契約周りはきちんとチェックしたんです。
そのおかげで、私に対しては、金銭的にあまり負担はなかったんです。展示会の出展費用も、写真展で回収することが出来ました。
契約周りを人任せにせずきちんと確認しておいて、本当に良かったと思っています。
それでも、しばらくの間、精神的なショックは大きかったです。クラウドファンディングもお返ししなければいけなかったし。
ただ、事後処理をする中でも、応援してくれる人がいたり、たくさん注文していただいていているのに「俺の分お金は返さなくていい」と言ってくれるお客様がいたり、いろんな形で暖かい言葉をかけていただきました。
どの世界でも、どんな仕事をしていても、人は大事なんだな、と。
ー モックアップまで作ったので別の会社と製品化する、という考えはなかったんでしょうか?
「一緒にやりませんか」というお話はいただきました。ただ、気持ち的に、一度この会社が駄目だったから、別の会社とパートナーになって、とはならなかったんです。
もちろん、一方的に通達されたから、怒りはありましたけど、簡単に他の会社と組んで、という気持ちにならなくて。
ー 「今から考えれば、こうしておけばよかった」と思うことはありますか?
いっぱいあります(笑)
私は、行動から先に入ってしまうタイプなので、パートナーを組む会社のことを、もっと知っておけばよかったな、と。
それから、ビジネスプランもいろいろ変わるものなのですが、もっと練っておくべきだったな、とも思っています。
ー 一番大きかった学びは何でしょうか?
起業って、お金がかかるんだな、ということですね(笑)ナントカ税とか、よくわからない税金もたくさんあるし、どんどんお金が出ていって。お金は大事です。
それから、向き不向きがはっきりしている世界だと思いました。サラリーマンと違って、とことん尖っている人もたくさんいますし。
ー それはよくわかります。起業してよかったことはありますか。
起業する前は、経営コンサルタントとして働いてきましたが、実際に起業してみると、事業のことは何もわかっていなかったんだな、とわかりました。
それから、やはり持続するということはすごいんだな、と。何年もやられている中小企業の方に対しても、実感を持って尊敬の念を持つようになりました。
いろいろあったけど、すごくいい経験だったと思います。
ー 今までの自分の人生で、これは起業に役に立った、ということはありますか?
今も司法試験の勉強をしながら、週の半分くらいはコンサルの仕事をしているんですが、起業しているときも、コンサルティングファームからいろいろと業務提携のお話は頂いていました。それはありがたかったです。
自信がなくなることも多かったのですが、一人でもなんとかなる、ということに力づけられました。
ー 手に職があって良かった、ということですね。
そうですね。
ー それから、なんで事業を清算してから、弁護士の道に?
起業してわかったんですが、私は経営者と言うより「専門家」や「プロフェッショナル」というものに憧れるんだな、とわかったんです。
契約周りで苦労する中で、ビジネスの知識があったり、外国語が喋れる弁護士にはきっと価値があるんだろうな、とも思って。
それで、弁護士になろうと思って、翌週に願書の締切だったので、急いで提出したら合格しました(笑)。
ー 最後に、後輩の起業家にメッセージをお願いします。
行動と考えることのバランスが大事だと思います。私は行動が先になってしまうタイプですが、考えすぎて失敗する人もたくさん見てきました。
もし自分が行動するタイプなら、一歩下がって考えられる人をパートナーにしたり、そういう人を含めたチームを作る、というのが大事なのではないでしょうか。
起業家の教え #1
- 何が起こるかわからない。契約はしっかり確認しておこう
- 自分の弱みを補えるパートナーを見つけよう
- 起業にはお金がかかる!手に職をつけておこう
企業がやる Instagram がたいていダサくなる理由
ある方から「なぜ Instagram が失敗するのか?」という相談を受けたことがありました。
(どう見てもインスタグラマー感のない僕に相談する時点でヤバい気がしますが)
僕はその時、「御社で一番Instagramを使ってそうな人に任せてみればいいんじゃないですか?」と答えました。
これは、まあ大抵のデジタルマーケティングが失敗する理由を回避するためなのですが、今日はその話について。
よくある流れ
こんなやりとりが本当にあるかはともかくとして、こういうことはよくあります。
その結果、こうなります。
かくして、なんとなく始まった Instagram アカウントは、永遠にダサいままで運用されることになります。
デジタルマーケティングが失敗する理由
だいたいのデジタルマーケティングが失敗するプロセスは共通しています。典型的なのは下記のような例です。
① なんとなくやらなきゃ、と感じて始める
② 担当者に知見がなく、運用コストをかけたくないので外部委託(か部下に丸投げ)する
③ 数字だけ見るからPDCAが回せない
④ 改善しないので永遠に成果が上がらない
要は、「成果を評価する人が、そのプラットフォームに対する知見があるかないか」ということが重要なわけです。
冒頭で言った「なぜ失敗したかわからない(他アカウントとの違いがわからない)」のは、結構致命的です。
例えば、「他のアカウントと比べて写真にセンスがない」とか「投稿の頻度が少ない」とか、それがわかっているならいいのですが、何もわかっていないということはおそらくそれを判断するセンスが無いとわけなので、潔く自分には判断力がないと認めたほうがいいでしょう。
サマった数字だけ見ているとダメになる
「一人の死は悲劇であるが百万人の死は統計的な事実である」という有名な言葉があります。
重要なことは、丸まった数字をもらっても、その実態は明らかにならないということです。
それぞれの投稿にどのような意味があるか、価値があるかを把握しなければいけません。
SNS マーケティングの結果をフォロワー数エンゲージメント率の数字だけで判断する、というのは間違っています。
Instagram というマーケット(市場)において商品となるのは写真や投稿そのものです。
どれほど自社製品に対して理解があっても、そのプラットフォームに対して知見がなければ、正しい評価はできません。
数字だけ見ても、本当にその投稿が正しい方向性に向かっているかどうか、判断することはできません。
日本企業の悲劇
こんなことは当たり前のことであって、わざわざ書くほどのことでもないんです。
しかし実際のところ 日本の企業では、ろくに自分ではInstagramを使ってなかったり、Twitterを使ってなかったりする人が、フォロワー数やエンゲージメント率だけを見て、SNSマーケティングの成否を評価する立場にいたりします。
EC化を担当する人が普段Amazonやメルカリすら使ってないケースだってあるわけです。
なんとなく今旬だから、他がやってるから、という理由で初めても、自分がそのマーケットに対して理解がなければ、方向性が正しいかも判断することは出来ません。
そうなると、広告代理店やコンサルタントに外部委託することになります。
しかし、広告代理店やコンサルタントは所詮他人です。彼らは顧客の事業に対して責任をおっているわけではありません。
日本に共通する問題
日本のあらゆる場所で、意思決定者がトレンドに追いついておらず、善悪の判断がつかない、という事態が起きています。
だから「なんとなく旬だ」と思ってやってるだけの SNS アカウントや、作っただけのオウンドメディアが氾濫するわけです。
なんとなく旬だから始めることにして、やり方が分からないから広告代理店に丸投げして、それで数字が出ないから担当者を詰める。
こんなことで効果が出るはずがありません。何だってそうです。SEO にしろ、広告にしろ、SNS にしろ。
(一体、全盛期につくられたオウンドメディアがいくつ残っているでしょうか?)
どういう種類のマーケティングであれ、始める前には戦術と戦略と勝てる可能性があるという確信が必要です。
Instagram のマーケティングをやるなら、本当に今の人員リソースでや運用コストで、他社に勝てる運用が可能なのかを考える必要がありま。
なんとなく始めてから どうやって回していくのかを考えるのは、まさに泥棒を捕まえてから縄を縫うような話です。
勝ちパターンを決めないままにマーケットに手を伸ばすのは、危険きわまりありません。
大事なこと
大事なことは、一番そのプラットフォームを普段から使っている人に判断を任せることです。
例えば自分が普段、あまりSNSを使わないのであれば、思い切って若手を登用することも考えて見るべきでしょう。
「私は盲目だったが今は見える」という言葉がありますが、自らが判断がつかない、五里霧中であることを潔く認めることが、日本の経営者や意思決定者に求められているのではないでしょうか。
最近面白かった記事
企業がやる Instagram がたいていダサくなる理由
ある方から「なぜ Instagram が失敗するのか?」という相談を受けたことがありました。
(どう見てもインスタグラマー感のない僕に相談する時点でヤバい気がしますが)
僕はその時、「御社で一番Instagramを使ってそうな人に任せてみればいいんじゃないですか?」と答えました。
これは、まあ大抵のデジタルマーケティングが失敗する理由を回避するためなのですが、今日はその話について。
よくある流れ
こんなやりとりが本当にあるかはともかくとして、こういうことはよくあります。
その結果、こうなります。
かくして、なんとなく始まった Instagram アカウントは、永遠にダサいままで運用されることになります。
デジタルマーケティングが失敗する理由
だいたいのデジタルマーケティングが失敗するプロセスは共通しています。典型的なのは下記のような例です。
① なんとなくやらなきゃ、と感じて始める
② 担当者に知見がなく、運用コストをかけたくないので外部委託(か部下に丸投げ)する
③ 数字だけ見るからPDCAが回せない
④ 改善しないので永遠に成果が上がらない
要は、「成果を評価する人が、そのプラットフォームに対する知見があるかないか」ということが重要なわけです。
冒頭で言った「なぜ失敗したかわからない(他アカウントとの違いがわからない)」のは、結構致命的です。
例えば、「他のアカウントと比べて写真にセンスがない」とか「投稿の頻度が少ない」とか、それがわかっているならいいのですが、何もわかっていないということはおそらくそれを判断するセンスが無いとわけなので、潔く自分には判断力がないと認めたほうがいいでしょう。
サマった数字だけ見ているとダメになる
「一人の死は悲劇であるが百万人の死は統計的な事実である」という有名な言葉があります。
重要なことは、丸まった数字をもらっても、その実態は明らかにならないということです。
それぞれの投稿にどのような意味があるか、価値があるかを把握しなければいけません。
SNS マーケティングの結果をフォロワー数エンゲージメント率の数字だけで判断する、というのは間違っています。
Instagram というマーケット(市場)において商品となるのは写真や投稿そのものです。
どれほど自社製品に対して理解があっても、そのプラットフォームに対して知見がなければ、正しい評価はできません。
数字だけ見ても、本当にその投稿が正しい方向性に向かっているかどうか、判断することはできません。
日本企業の悲劇
こんなことは当たり前のことであって、わざわざ書くほどのことでもないんです。
しかし実際のところ 日本の企業では、ろくに自分ではInstagramを使ってなかったり、Twitterを使ってなかったりする人が、フォロワー数やエンゲージメント率だけを見て、SNSマーケティングの成否を評価する立場にいたりします。
EC化を担当する人が普段Amazonやメルカリすら使ってないケースだってあるわけです。
なんとなく今旬だから、他がやってるから、という理由で初めても、自分がそのマーケットに対して理解がなければ、方向性が正しいかも判断することは出来ません。
そうなると、広告代理店やコンサルタントに外部委託することになります。
しかし、広告代理店やコンサルタントは所詮他人です。彼らは顧客の事業に対して責任をおっているわけではありません。
日本に共通する問題
日本のあらゆる場所で、意思決定者がトレンドに追いついておらず、善悪の判断がつかない、という事態が起きています。
だから「なんとなく旬だ」と思ってやってるだけの SNS アカウントや、作っただけのオウンドメディアが氾濫するわけです。
なんとなく旬だから始めることにして、やり方が分からないから広告代理店に丸投げして、それで数字が出ないから担当者を詰める。
こんなことで効果が出るはずがありません。何だってそうです。SEO にしろ、広告にしろ、SNS にしろ。
(一体、全盛期につくられたオウンドメディアがいくつ残っているでしょうか?)
どういう種類のマーケティングであれ、始める前には戦術と戦略と勝てる可能性があるという確信が必要です。
Instagram のマーケティングをやるなら、本当に今の人員リソースでや運用コストで、他社に勝てる運用が可能なのかを考える必要がありま。
なんとなく始めてから どうやって回していくのかを考えるのは、まさに泥棒を捕まえてから縄を縫うような話です。
勝ちパターンを決めないままにマーケットに手を伸ばすのは、危険きわまりありません。
大事なこと
大事なことは、一番そのプラットフォームを普段から使っている人に判断を任せることです。
例えば自分が普段、あまりSNSを使わないのであれば、思い切って若手を登用することも考えて見るべきでしょう。
「私は盲目だったが今は見える」という言葉がありますが、自らが判断がつかない、五里霧中であることを潔く認めることが、日本の経営者や意思決定者に求められているのではないでしょうか。
最近面白かった記事