新聞社ごとのデジタル・マーケティング戦略を分析する
普段、内容で語られがちな新聞ですが、今回はマーケティング的に、どのような違いがあるかについて分析していきます。
今回、分析ツールとして、SimilarWeb を利用しました。
- このツール、あくまで推定値を表示しているだけなので、実数ではありません。時々外してます。ご容赦ください。
- 全て、2018年3月の数字です(一ヶ月間だけの数字なので、直近のニュース内容などで左右されている可能性があります)。
- あくまで推定値なので、混乱を避けるためにグラフには実数(の推定値)は乗せていません。パーセンテージは乗せています。
先行する朝日
まず、Similar Webで確認した、流入元ごとのセッション数の違いを見てみましょう。
全体的なセッション数としては
朝日 > 日経 > 読売 > 毎日 > 産経
という順になります。朝日新聞が先行し、デジタル化をいち早く成功させた日経新聞が続いている、といった状況です。
朝日新聞に関しては、ソーシャルメディアの強さも目立っています。
はてなブックマークからの流入も圧倒的に多く、Twitterからの流入も他社と比べて最大です。
デジタル化の日経
また、日経新聞に関しては、セッションごとの閲覧ページ数、つまりユーザーの回遊率も他のサイトに比べて高くなっています(逆に、毎日新聞の低さが際立ちます)。
これらを含めて、デジタル化に最も成功した新聞社は日経新聞である、というのは疑いようがないところでしょう。
また、目を引くのが公式アカウントのフォロワー数です。朝日新聞を大きく引き離し、300万人近いフォロワー数を誇っています。
ブランド力の読売
こちらは、全体を100としたときの、各流入元ごとの比率です。
ダイレクトの流入(URLを入れたり、ブックマークから流入したり)は、読売新聞が朝日新聞よりも多いことがわかります。
読売新聞は、半数以上がダイレクト流入というニュースサイトとしては異例の多さです。流石は発行部数世界一、と言ったところでしょうか。
検索に強い毎日
また、毎日新聞の検索流入への依存度の高さも目を引きます。検索数では、日経新聞と朝日新聞に次ぐ二位となっています。
記事ごとで見ると、最も検索エンジン最適化(SEO)の施策が成功している新聞社サイトであるといえるのではないでしょうか。
毎日新聞は、記事の転載を許諾しているケースが多く、被リンクが多くなっている可能性があります。
例えば、話題の「加計学園」をシークレットモードで検索すると、毎日新聞の記事がウィキペディアの次に出てきます。
興味深いのが、毎日新聞を指名している検索が多いわけではない、ということです。
例えば、Google Trends で調べた、過去十二ヶ月間の新聞社の関連クエリの検索は、下記のように毎日新聞が最も少なくなっています。
また、指名検索での流入割合も、他サイトに比べるとかなり低くなっています。
ニュースサイトとしての立ち位置が必ずしも朝日や産経ほどには明確ではない、という点に一因があるのかもしれません。
健闘する産経
Business Journal の2016年の記事によると、各新聞社ごとの販売部数はこのようになっています。
- 読売新聞 8,959,597
- 朝日新聞 6,456,861
- 毎日新聞 3,055,276
- 日経新聞 2,719,080
- 産経新聞 1,592,388
この販売部数でセッション数を割ると、結果は下記のようになります。
読売新聞は、販売部数の割にはデジタル化に成功してはいないことがわかります。
一方、産経新聞は、販売部数に対して、デジタルでの存在感が大きいことがわかります。
また、ソーシャルメディアごとの流入割合で見ると、産経新聞はかなりTwitterからの割合が多く、はてなブックマークからの流入が少ないことがわかります。
この点も、プラットフォームごとのユーザーの性格が見えて、興味深いのではないでしょうか。
最後に
いかがでしたでしょうか?あくまで外部ツールを使っての分析ですので、実際の数値と違う所があればご容赦ください。
社によって有料記事にしている範囲なども違うため、一概に比べられるものでもない、という批判はあるかと思います。
日本もこれから新聞社の大きなビジネスモデルの転換を迎える中で、どのようにデジタル化に対応するかは興味深いです。