投票に行くだけでは充分ではない。30歳を前にした我々世代の責任について
参議院選挙(7月21日投開票)が全く盛り上がっていません。特に、私と同じ20代の投票率がとても低いそうです。
それについて考えていたことを投稿します。
私はもともと政治業界に縁があり、今回もいくつかの候補のお手伝いをしています。
とりわけ学生時代からの先輩である 原田 謙介さんの選挙は、本当にいろいろな形でかかわらせていただきました。
(立憲民主党公認・岡山県選挙区です。岡山の皆様、よろしくお願いします。若く、相手候補は重鎮であるため厳しい選挙ですが、本当に熱意のある素晴らしい候補です)
今回の選挙にあたり、自分のTwitterのフォローしているタイムラインを見ていて思ったことがあります。
我々の同世代、つまり今20代後半から30代前半くらいの「優秀な」人たちは、「投票率をあげよう」みたいなツイートはRTするけど、誰を応援するか、選挙で何を注目しているか、この国がどうなっていくべきなのか、についてはほとんど書いていません。
政治について、全く語らない世代なのです。
僕は「投票率をあげれば若者の声が届く」というような嘘が、嫌いです。
投票率を上げたところで、実際に人口のボリュームゾーンが40代以上である限り、大した影響はない。
でも、日本の次を担う我々の世代が政治や湖の国のあり方について沈黙しているのは、実はとても怖いことじゃないでしょうか。
僕は幸運にも早稲田大学というそれなりに有名な大学を卒業し、就職活動などを通じて、多くの日本を背負って立つ人たちと友達になっています。ありがたいことに。
それでも、彼らと政治や選挙について語ることは、殆ど無い。英語圏の人たちと比べれば、異常なほど少ないと言ってもいいでしょう。政治を語ったり、自らの主張を公にする文化がないのです。
しかし、日本のトップ層の若者やミドル層、例えば大企業の若手エース、外資系起業のエリート、あるいはベンチャー企業の経営層が、参議院選挙という大きな国家のイベントを前にして、この国をどうしていくのか、国家ビジョンをどうすべきかについて、何も語らない。立場を明らかにしない。沈黙している。
グローバル戦略、イノベーション。スタートアップ。大事ですよ。でも、政治でしかできないことはたくさんあります。なのに、政治について何を考えているのか、何も見えない。
この現実は、実は日本社会の見通しが暗く、長期的ビジョンが見えないことと地続きではないのか、と思えてならないのです。
その責任の一端は、もちろん同世代を生きてきたものとして、僕にもあります。
ドナルド・トランプ大統領に罵倒された、AOCことオカシオ・コルテス上院議員は、1989年生まれ、ほぼ同世代です。
この国のトップから「国に帰れ」と言われて、それでも戦い続けている彼女と、我々は同世代です。彼女たちは我々の100万倍理不尽な思いをしながら、それでも社会を変えようと、責任を引き受けている。
彼らは、世界が黙っていても良くなるわけじゃないと知っているんです。だから戦っている。そうして戦った人たちのおかげで今の我々がある。
それに引き換え、僕は一体どのような責任を、この社会に果たしているのか。自分を恥じ入る思いです。
「信頼できる政治家がいない」という声があります。
でも、僕はたったこれだけの文章を書くのにも勇気を必要としている。
それに比べ、人前で堂々と政策とこの国がどうあるべきかを語り、リスクをとって立候補した彼らはどれほどすごいのだろう、と思うのです。
いい加減、我々ももういい大人ですよ。我々の世代が黙っていたら、日本はお先真っ暗じゃないですか?いい加減我々の世代が考えて、発信していかなくちゃいけない。
かわいい猫画像をリツイートするだけではなく、この国がどうあるべきか、語るべきなんです。
参議院選挙の争点
今回の参院選挙、テレビでは盛り上がりにはかけるかもしれませんが、実はとても重要な選挙だと思っています。
「政治分野における男女共同参画法」が可決されてからはじめての選挙であること、そして、選択的夫婦別姓や同性婚など、これまでほとんど政治的争点に上がらなかったことが一つの争点になっていること。
そしてまた、障害者や多くのマイノリティの当事者が、立候補していることです。
現在、衆院は男性が9割、参院は男性が8割。議会はとてもいびつな形になっています。そして、与党自民党は今回、立候補者の中の14.6%が女性です。今の参院の比率よりも下がっています(野党第一党の立憲民主党は45.2%)
諸外国と比べようがないほど低い数値です。男女共同参画を実現する気が与党にないことは明白でしょう。
また、問題は男性女性の話だけではありません。男性の議員多様性も、実はあまりないのです。皆同じように政治家の家系に生まれた人たちが、閣僚になり、この国の重責を担っています。
日本の議会はおそらく世界に類を見ないほど画一的な人たちで構成されているのではないでしょうか。
今回の参議院選挙で当選した議員は6年間、一人あたり何億円もかけ、国政を預かることになります。
その議員の中に、本当にたった15%以下しか女性がいなくて、いいのでしょうか。
世の中びっくりするほど「女は政治家に向かない」とか「女は家庭にいろ」と思ってる人、います。
おそらく、この投稿を見ている人の中にも、いるはずです。
差別と自覚していなくても、「男女共同参画って言ったって、優秀じゃない人が政治家になっちゃ困る」とか思っている人はたくさんいます(本来、優秀な女性を連れてきて立候補させるのが、政権与党の責任なのですが……)。
性差別だけじゃありません。人種差別にしろ、他のあらゆる差別にしろ、一見とても良識あるように見えても、びっくりするほど差別的な人、たくさんいます。
でも、我々が沈黙していれば、何も変わらず、昔ながらの感覚で、日本の意思決定機構はそのままの形を維持していく。そして、誰かの権利が抑圧されていく。
例えば選択的夫婦別姓について考えてみてください。選択的夫婦別姓が認められたところで、誰も困りません。選択的夫婦別姓を実現したところで台風がやってきたり日本経済が破綻することはないでしょう。
誰かの権利を認めることが寛容になれない人たちが意思決定をしている限り、そんな小さなことすら実現しないのが現状です
。
「我々には関係ない」と思っている多くの人が黙っている限り、変わらないんです。
同性婚も、そうです。あの有名なスピーチで言っている通り、愛し合う一組のカップルが結婚したところで、あなたの借金が増えるわけじゃない。山火事が起きるわけでも、戦争が起きるわけでもない。誰も困らないんです。
選択的夫婦別姓や同性婚は、多くの世論調査において若年層では賛成の方が多い。でも、実現しない。我々が沈黙していたら、きっと、実現までに更に何十年もかかります。
本当にそれで、次の世代への責任を果たしていると言えるのでしょうか。
選択的夫婦別姓は小さな事かもしれない。でも、こんな問題が世の中にはたくさんある。小さな課題でも、その課題を抱える人が議会にいなければ法律を変えられない。そんなことはたくさんあるんです。
いつかは自分も、その当事者になるかもしれない。
「自分には関係ない」で黙っていて、物事が流れるのを傍観しているなら、次世代への責任を果たしているとは言えません。
で、何をしてほしいのか
男女共同参画に近い議会を実現させることが、この参院選における大きな社会的意義だと思います。
それだけではなく、硬直化し、多様性を失い、またいま存在している課題に対応できていない議会を、より様々な声を包摂する議会構成に変えることが、絶対に日本の未来を変えるために必要だと思っています。
残念ながら、今回の公約、あるいはこれまでの政権運営を見る限り、与党にそれを期待することは難しいでしょう。それが僕の結論です。
投票に行くだけでは、充分ではありません。我々の世代は戦わなくてはいけない。差別や不公正さ、あるいは社会が抱える課題と戦わなくてはいけない。
それが出来る力と、そしておそらくその感覚を持っているのは、今の20代・30代です。我々は多分そんなに差別的な世代ではない。でも、ちょっと勇気が足りないと思う。
私はこの国で生きていきます。男性であろうと女性であろうと、どのようなセクシャリティであろうと、障害があろうと、生まれが違おうと、幸せになれる社会を自分たちの次の世代に残したい。
そろそろ、その責任を引き受けるときがきたんじゃないでしょうか。
何か語りましょう。投稿しましょう。せっかくだから。我々が日本を背負っていかなくてはいけないのだから。
この国が変わっていく大事な選挙ですから。
「投票に行こう」だけではなく、参議院選挙が、多くの人にとって日本の未来について考え、発信する転機となることを望んでいます。
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独立する前に読みたい、フリーランス向け【おすすめ書籍】まとめ
フリーランスとしてはじめる前に、ある程度必要な知識というものが有ります。例えば税務処理だったり、あるいは法人営業のやり方だったり
ここでご紹介する本は、私が独立してから様々な形で読み、勉強させて頂いた本の数々です。
スキル・体験談の話
耳に痛い話ばかりですが ー マンガ 自営業の老後
レビュー・反応のまとめ
50歳まで国民年金を一度も払ったことがなく、確定申告を期限内にせずに追徴課税。それでいて家は即金二千万出してぽんと買う。自営業は確かに保障が薄いですが、この著者はそれ以前の問題としてだらしがなく、低モラルな人間です。
国民年金払わないで民間の保険に入っているなんて本当ひどすぎるリテラシーです。年金って半分国庫負担ですからね。それ以前に国民年金の保険料納付は義務ですしね。
面白かったです。とにかくお金を稼いでも、貯金や、老後への備えをしていないと大変。いろんな制度があることも分かりました。
私の感想
ユーザーレビューでは結構ボコボコですが、割と面白かったです。フリーランスをしていると目の前の仕事に手一杯で、いろいろな作業が出来ないのはよくわかります。少しぐらいうっかりしていても、大丈夫という事がわかるのは、大きな力になるはずです。
失敗しないビジネスのために ー そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか
そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか 最新改訂版 (メディアワークス文庫)
- 作者: 山口揚平
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
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レビュー・反応のまとめ
著者が述べているような太い法人を顧客にするというのは、それこそ言うは易しでなかなかそう上手く行くものではないし、また取引がずっと続くとも限らないし、コネクションの無い(または薄い)一般人はそれこそ小売りでコツコツ日銭稼ぐ方法を採用したほうがマシというかまだ路頭に迷わないのでは?と、思った。
独立するための知識やビジネスモデルを示すよりも、大事なのは「知」である。知識や技術だけではなく、知恵である。サラリーマンが身につけている常識は役に立たない。すべて自分で考え、自分で決めるのだ。
いろいろなビジネスモデルと、ビジネスを起こす点でのメンタリティを論じた本かとおもいます。一年ほど前に本書を読み、そういう考え方もあるのだな程度の感想をもっていました。ただ独立期で収入が100万を越える、というところに疑念がありました。そんなに稼げるものかと。
私の感想
綺麗に、ビジネスを始める方法をまとめていると思います。その中で、とりわけ toB の部分を相当に追求されているのかなと。一読する価値は充分にある書籍だと思います。
税金・経費などお金の話
税金関係はこの一冊 ー フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。
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レビュー・反応のまとめ
フリーになったとほぼ同時に購入しました。 ほぼ何も知らなくても、この本で大体わかります。この本のいい点は、建前だけでなく、本音も組み込まれているところです。
申告の手引きではないので、これを読めば青色申告が出せるわけではありませんが、これを読んでおけば、本音と建前がわかります。 周りに手慣れた個人事業主の友人がいなければ、買っておいて損はないです。
サクサクよめて、かつ理解しやすく、税金について教えてくれる本でした。 フリーランスとしてやっていくためにここはきをつけておくんだよ!的なことが色々と書いてある本です。
私の感想
非常に分かりやすい本です。とにかく、この一冊さえあれば税務処理関係は問題ないのでは。細かいところに関してはいろいろとググってみないとわかりませんが、おすすめです。
前田さん、主婦の私もフリーランスになれますか?
レビュー・反応のまとめ
いざ、独立してしまってから「ああ、自分の想定と違った」というのでは、余力がなくなり追い詰められてしまいます。この本を用いて「自分についての棚卸し」をしてからでも遅くはありません。 「育児や介護をしながらできるビジネス」のヒントが載っています。
ご自身の経験をもとに、ライターさんがまとめておられるのでとても読みやすく共感ポイントがたくさんありました。 これから自分の力で仕事を広げて行こうとする主婦の方に対して重要なマインドの部分が丁寧に書かれていて、読み終える頃には「自分で道を切り開こう」「丁寧な仕事で応えていこう」という気持ちになります。
この本と出会って、働き方は私が決める。この道を切り拓いてくんだ。大切なのはあきらめないこと。と学びました。
私の感想
主婦からフリーランス、なんて一昔前なら非常に難しい話でしたが、作者の方が誠実にクライアントに向かい合っていることがよく分かる本でした。おすすめです。
新しい働き方の話
リモートワークって一体? ー 小さなチーム、大きな仕事――働き方の新スタンダード
小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則
- 作者: ジェイソン・フリード,デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン,黒沢 健二,松永 肇一,美谷 広海,祐佳 ヤング
- 出版社/メーカー: 早川書房
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レビュー・反応のまとめ
私は自営業ですが、この本は大いに参考になりました。もっとはやく読めばよかったと悔やまれます。大学でこんなことを学びたかったんだと、今にして思います。
印象に残ったフレーズは以下のようなものです。 より良いものにするためにはいくつかを犠牲にしないといけない。中途半端な完成品より、機能を半分に絞っても中身の良い製品。ミュージシャンは素晴らしいアルバムを作るために良い曲を取り除くのと一緒。
Basecamp(旧名37Signals)というアメリカのソフトウェア開発会社の創業メンバーが書いた、一風変わったビジネス書(本人たちもそういっている)。時に常識に反する刺激的なアドバイスが並ぶが、それなりに理屈は通っており、そういう考え方もあるな、と何度か気づきがあった。
私の感想
この会社、エンジニアなら誰でも知っている Ruby on Rails の開発企業です。スーパーエンジニアと比較されると困る部分もありますが、それでも新しい働き方を外連味無く紹介されていて、非常に興味深い一冊です。
こんな働き方もあっていいんだ! ー ギグ・エコノミー 人生100年時代を幸せに暮らす最強の働き方
ギグ・エコノミー 人生100年時代を幸せに暮らす最強の働き方
- 作者: ダイアン・マルケイ,門脇弘典
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2017/09/22
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レビュー・反応のまとめ
職種や組織ではなく、社会に対して何がしたいのか?ということに常に向き合いながら行きていくことが求められるのです。結局のところ、「より充実した人生を送るためにどのように生きたいのか?」という問いに対する、一人ひとりの選択の集積が、ギグ・エコノミーのうねりを生み出しているのでしょう
私の感想
なるほど、という感じの一冊。長寿社会の今、長いタイムスパンで見れば一つの会社に固執することのリスクが見えてくるはずです。その意味で、未来を示唆するような本だと感じました。
映画#5 グラン・トリノが変えなかったもの(90点)
採点
90点
名言
人を殺す気持ちを知りたいんだろ。最悪だ。もっとひどいのは、降参するあわれな子どもを殺して勲章をもらうことだ
ひとこと(ネタバレ無し)
ストーリーとしては王道で、むちゃくちゃ面白い。偏屈で影のある老人、引っ込み思案な男の成長。面白いんだけど、ね。
ひとこと(ネタバレ有り)
この映画の引っかかる点はたった一つ。スーがなぜレイプされる必要があったのか?ということ。「マジカル・ニグロ」という言葉があるが、スーはただ、白人にとって都合の良いアジア人女性として書かれているように見える。
彼女は差別的な発言も笑って受け流し、「都合よく」黒人に絡まれて助けられ、そして物語上必要だからレイプされて傷を負う。
そこがどうしても引っかかってしまう。イーストウッドは最後までイーストウッドであり、彼は何も反省することがない。
でも面白いから困っちゃうんだよなあ。
プレ・マーケティングの時代
ここでは、事業を立ち上げる前にマーケティングをはじめることを提案します。リーンスタートアップやクラウドファンディングなどトレンドの手法を使いながら、「いかにリスクは少なくマーケティングを行うか」を提案します。
プレ・マーケティングの時代❶ ―― クラウドファンディングの流行
本章では、「プレ・マーケティング」という概念を提唱します。プレ・マーケティングとは、実際に製品を開発し、販売する前に行うべきマーケティングです。たとえば、Webサイトの公開前に、TwitterのフォロワーやFacebookページのいいね数、メールマガジンの購読数が一定数あれば、最初の反応が変わってくるでしょう。スマートフォンの普及により、顧客とつながる方法が多様化していることも見逃せません。このように、製品やサービスの公開前に顧客とつながることは、様々な好影響を、製品やサービスにもたらします。
2016年11月、戦時中の広島県呉の生活を描いた長編アニメーション映画『この世界の片隅に』が公開されました。この映画は公開から1年半以上経った今でも(18年8月現在)、劇場で上映されており、異例のロングランです。18年に入って、興業収入が27億円を超えたと言われています。
公開当初はわずか63館での上映でしたが、観客の口コミによって評判が徐々に広まり、結果、映画館での上映は400館を超えました。実はこの映画、他の映画とは違う画期的な点が1つあります。それは、クラウドファンディング(不特定多数による、リターンを前提としない投資)を利用した資金調達で、制作費の一部を負担していることです。実際、3374人の一般のファンから出資を募り、約3912万円の資金調達ができました。
このクラウドファンディングでは、出資者が6つの支援コースの中からコースを選び、出資します。支援コースによっては、本編のエンドロールに出資者の名前がクレジットされるそうです。
用語解説 : クラウドファンディング(Crowdfunding)
多数の出資者から出資を受け、現金ではない形でリターンを返すファンディング(出資)手法を指します。
制作前からお金を出す明確なファンがいることから一定の需要が見込め、彼らが口コミで広めてくれるので、実際に製品完成後もSNSなどでの拡散が期待できます。ファンディングプラットフォームとして世界的に有名なKickstarterは、17年9月に日本版サービスを開始しました。
クラウドファンディングは寄付ではありません。
純然たるマーケティングの手法です。事前に一定額の資金を集められるため、クラウドファンディングのような仕組みは、制作する側にとっても効果が高いのです。
このように、製品完成前や事業スタート前からマーケティングによって顧客を集める手法を、本書では「プレ・マーケティング」と定義しています。なぜプレ・マーケティングという手法を提唱しているのか。それは、充分なマーケティングを行わないまま失敗した企業が、今までに多数存在してきたからです。
クラウドファンディングの流れ
❶一定額を出資
❷一定額に達すれば、プロジェクトがスタート
❸出資額に応じて、金銭ではないリターンを提供
まず、需要があるかどうかを確認して、それから作る。これによって、誰もほしがらないものを作ってしまうという最大のリスクを避けることができます。
クラウドファンディングだけではありません。スタートアップ企業でも、完成版の製品を公開する前に、未完成の「ベータ版」の製品を公開し「ベータリリース」として、顧客を集めるなどの手法が取られます。
エドセルの失敗
もっとも有名な例は、アメリカの自動車メーカー、フォード社が発売した「エドセル」でしょう。当時のフォード社は、世界最高の市場調査能力を持っていました。様々な機能と斬新なデザインを備えたその車には、重大な欠点がありました。一度も顧客へのテスト販売をしなかったのです。エドセルは、フォード社が大々的に発表し、全国で発売されましたが、大失敗に終わりました。ほとんど売れないばかりか、フォード社に莫大な負債を残してしまったのです。
AdKeeperの失敗
何億、何十億円も投資を受けたベンチャー企業やスタートアップ企業でも同じ失敗をすることがあります。スタートアップ企業のAdKeeperは、新聞広告を切り抜きするように、オンライン広告を保存できるサービスを顧客に提供していました。しかし、数千万ドルを調達した後にわかったのは、顧客は広告を保存などしたがらない、ということでした。(参考)
かつては、プロダクト・アウトかマーケット・イン、どちらが正しいのか?という論争がありました。今ではナンセンスな問いでしょう。顧客が必要とするものを作らなければ、大失敗することが明らかになっているからです。マーケターに求められる能力は、顧客が必要とするものをどのように実現し、表現するか、ということです。プレ・マーケティングを行わない理由は、何ひとつありません。
プレ・マーケティングの時代❷ ―― リーンスタートアップの流行
プレ・マーケティングの考え方は、生存競争の激しい、北米や欧州のスタートアップ企業(ベンチャー企業)にも浸透しています。スタートアップ企業は、今までに存在しないサービスを立ち上げます。つまり、すでにニーズが証明されている既存事業よりも、より多角的な観点から、顧客のニーズが存在するかを検討しなければいけません。特に、トヨタのかんばん方式を起業や新規事業の立ち上げに応用した「リーンスタートアップ」の手法は、マーケティング・ファーストそのものであると言えるでしょう。
コストを掛けずに、MVP(必要最小限の製品)を作り、可能な限り早く顧客からのフィードバックを得ることを目的としたスタートアップ立ち上げのメソッドです。「複雑な計画を立てるのではなく、シンプルにはじめる」「軌道修正を常に繰り返す」などのモットーがあり、スタートアップ業界ではメジャーなメソッドとなっています。
リーンスタートアップは、2008年にアメリカの起業家であるエリック・リースが提唱しました。リースは、著書『リーン・スタートアップ』(日経BP、2012年)の中で「最大のリスクは、誰もほしがらないものを作ってしまうことだ」と述べています。
- 作者: エリック・リース,伊藤穣一(MITメディアラボ所長),井口耕二
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2012/04/12
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ベンチャー業界の分析企業、CBInsightの調査1-6によると、スタートアップ企業やベンチャー企業が失敗する最大の理由は「そもそもマーケットに需要がない」ことを1番に挙げています。
このような現状を元にしたのが、リーンスタートアップの概念です。私たちの住む世界はとても不確実で、計画どおりに物事が進むとは限りません。だからこそ、常に顧客とつながり、製品やサービスを改善し続ける必要があるのです。
プレ・マーケティングの時代❸ ―― ドッグフーディングで既存事業を見直す
「ドッグフーディング(Dogfooding)」「EatYourOwnDogfood(自分の犬の餌を食べてみろ)」。これらは、IT業界の現場でよく使われる言葉です。意味は、新しい製品や機能を開発したとき、まずは社内で率先して試用することを言います。それでは、既存事業を見直すときに、ドッグフーディングはできないでしょうか?自社だけではなく、付き合いの長い企業などにまず試してもらうことで、その後のマーケティング戦略を明確にすることができるはずです。
デジタルの時代 - デジタル・マーケティングは、何を変えたのか?
デジタル・マーケティングが旧来のマーケティングと違うことは、皆さんよくご承知だと思います。ここでは、いったい何が変わり、何が変わっていないのかについて考えます。ポイントは、「相互の影響力」「パーソナライゼーション」、そして「スピード」です。
デジタル・マーケティングって、何?
この本を手に取られた方は、マーケティングの重要性を充分に理解されていると思います。
本書では「エグゼキューション(execution:実行)以外の全てのプロセス」をマーケティングと定義し、「インターネットを通じて顧客/潜在顧客と関わるあらゆる手段」をデジタル・マーケティングと定義しています。
自社のWebサイトやSNSのアカウントを持っていれば、その時点でマーケティングが必要になります。現に、多くの企業がTwitterやLINEのアカウントを持って、運用しています。また、Webサイトを持たない小さなレストランでも、レビューサイトには掲載されているかもしれません。
つまり、これからの時代、ほとんどの企業にとって「デジタル・マーケティングは必須」ということです。
では、デジタル・マーケティングはかつてのマーケティングに比べて、あるいは現代はかつての時代に比べて、何が変わり、何を変えようとしているのでしょうか。その疑問について考えるために、いくつかの具体的な事例を見ていきましょう。
デジタル・マーケティングの特徴❶――相互の影響力
東京都北区にある「中村印刷所」という小さな印刷所をご存じでしょうか?この印刷所が日本で注目されるきっかけになったのが、Twitterでした。
2016年、中村社長は数千冊のノートの在庫に頭を抱えていました。のちにヒット商品となる「方眼ノート」です。
製本所を営んでいた男性とともに中村社長は特許を取得し、発売しましたが、当初は製作者2人の予想に反して、ノートは全く売れませんでした。
元製本所の男性もノートの売上が伸びないことに責任を感じつつも、打開策は考えられず、孫娘に「学校の友達にノートをあげてくれ」と手渡しました。
「私は使わないけれど、もしかしたら......」と考えた孫娘がTwitterで宣伝したところ、リツイートはあっという間に3万を超えました。それに従い、自社のWebサイトのアクセスも激増し、続々と追加発注も入りました。
その後、ノートは大手企業と提携し、今では量販店でも購入できるほどの人気商品です。
中村印刷所は、大きな金額をかけてCMを打ったわけではありません。交通広告など、大々的なプロモーションをしたわけでもありません。
しかし、「これは使える」という多くの人のポジティブな思いがTwitter上で話題を呼び起こし、その商品を必要としている人たちの手に届いたのです。
一方、中村印刷所のストーリーとはまるで反対の話もあります。
大手企業でPR担当をしていたごく普通の女性の話です。彼女はフライトの直前にTwitterを開き、自分の数少ない170人のフォロワーに向かって、アフリカ旅行へ行く前に、アフリカに関するちょっとしたブラックジョークをツイートしたのです。
彼女は飛行機に乗り込んだのですが、ネット上では恐ろしいほどたくさんの反応が沸き起こっていました。
いわゆる「炎上」です。
彼女はその夜、世界一の有名人になりました。それも、最悪の形で。彼女は即刻会社を解雇され、その後長く精神的なダメージに苦しむことになりました。
この2つのストーリーは、一見反対のことを示しているように見えます
「テクノロジーは素晴らしい、いや、ひどいものだ」
「私たちはとても悪い人間だ。いや、とてもいい人間だ」
このストーリーが示した意味は、いい意味であれ、悪い意味であれ、私たち1人ひとりが「炎上」などを通じて、企業や他者に影響を及ぼしたり、気に入った商品を広めたりする、ということです。
ドキュメンタリー監督のジョン・ロンソンは、TEDトークでこう述べています。
ソーシャルメディアの偉大な点は、声なき弱者に声を与えたことです。でも私たちは監視社会を作りあげつつあります。そこで生き残る最も賢い方法は、声をあげないことなんです。
ありとあらゆる企業活動は相互的になり、レビューされ、つぶやかれ、写真に取られ、シェアされるようになりました。
ソーシャルメディアの世界では、たとえば不用意な発言1つで企業が多大なリスクを被る一方、意図せずに発した言葉によって一個人が一瞬にして世界的な有名人になる可能性もあります。
20世紀は企業主導の社会でしたが、現代は顧客主導の社会と言ってもよいでしょう。
「F-factor」という言葉をご存知でしょうか?
F-Factorとは、フィリップ・コトラーが自著『コトラーのマーケティング4.0スマートフォン時代の究極法則』(朝日新聞出版)の中で提唱した概念です。
F-Factor
- Family(家族)
- Friend(友達)
- Follower(フォロワー)
- Fans(ファン)
F-factorは、上記の4つをまとめた造語です。ソーシャルメディア時代において、影響力を及ぼしうる様々な要素についてまとめられ、提唱されたものです。
顧客や消費者の声が口コミによってすぐに届くということは、企業側も改善ポイントをすぐに見つけられるようになったということでもあります。顧客や消費者が口コミによって大きな力を持つ一方で、企業が顧客の口コミから多大な影響を受けるようになってきたこと、これがデジタル・マーケティングにおける大きな特徴です。
デジタル・マーケティングの特徴❷――パーソナライゼーション
もう1つのデジタル・マーケティングによる大きな変化は、パーソナライゼーションです。
パーソナライゼーション/パーソナライズ
顧客の行動履歴、閲覧履歴などを元に、コンテンツを最適化する技術です。たとえば、Google検索は顧客の検索履歴を元にパーソナライズされ、Amazonのおすすめ商品は、顧客の購入履歴を元にパーソナライズされています。
屋外広告、テレビ・ラジオCM、新聞・雑誌広告などは、読者や視聴者の属性から出稿する媒体を選ぶ程度でした。しかし、デジタル・マーケティングにおいては、ターゲティングの精度を従来の広告では考えられないほど細かく設定することが可能です。
ターゲティング
特定の顧客を狙って広告やコンテンツなどを打つことです。デモグラフィック(ユーザーの属性)ターゲティングや地域ターゲティングなど、様々な種類があります。
年齢や性別だけではなく、住んでいる地区単位、学歴、趣味嗜好までを細かく設定して、最近訪れたWebサイト、最近検索されたワード、最近出したメール(たとえばGmail上の広告などは、メール内容に合わせて広告が変化します)などからもターゲットを絞り込むことが可能になっています。
それではなぜ、これほどターゲティングが細かくなったのでしょう?多くの無関係な広告がインターネット上に溢れていることも1つの要因です。
マーケティング担当者向けのWebサイト「MarketingDive」の調査によれば1-3、顧客の71%はパーソナライズされた広告を好んでいます。その最大の理由は「無関係な広告を減らすのに役立つ(46%)」というものでした。自身にとって無関係なメッセージに人は興味を持ちにくいものです。
テレビCMが最大公約数的なプロモーションを目指したのとは正反対の進化が、デジタルの世界では起きています。
全てのメッセージは、より個人的なものになり「あなただけに」という形を取って現れるようになっていくでしょう。
デジタル・マーケティングの特徴❸――スピード
最後にもう1つ、デジタル時代の大きな特徴を挙げましょう。スピードです。たとえば、新しいテレビCMを流すには、通常、企画や制作などで一定の期間が必要です(少なくとも、1日2日で終わることはないでしょう)。新聞広告も、数週間の準備が必要です。しかし、デジタルであれば、事情は全く違います。一瞬にして顧客のフィードバックが得られるからです。
1時間だけ広告を試してみて、上手くいかなかったら広告の文章を変える、あるいはブログの記事を変更するということも、もちろん可能です。
スピードには、負の側面もあります。「デジタル・マーケティングは万能か?」というと、そういうわけでもありません。マーケティング担当者は、広告サイクルの速さに過重労働を強いられるからです。
イギリスのデジタル・マーケティング担当者は平均で毎週8時間余分に働いており、約半数(46%)が過労を感じ、約3分の1(30%)が、充分な給料をもらっていないと感じています。
digitalmarketingmagazine.co.uk
多くの日本企業でも、マーケティング担当の人数が充分ではありません。そのしわ寄せは、担当者、あるいは広告代理店の担当者に行くことになります。
実際に、広告代理店の若い社員の方が、過労などを理由にして亡くなったという悲惨な事件も起こっています。デジタル・マーケティングには、新しい時間サイクルが存在することを認めた上で、それに対応できる人的リソースを確保することが、現代の企業には求められています。
デジタル・マーケティングの特徴❹――数値化
かつて、「百貨店王」と呼ばれた偉大なマーケターである、ジョン・ワナメーカーは、かつて「広告費の半分が金の無駄になっていることはわかる。わからないのはどちらの半分が無駄になっているのかだ」と言いました。この言葉はよく知られています。
有史以来、広告はこのような欠陥を抱えていました。テレビ広告にせよ、屋外広告にせよ、その成果を検証することは簡単ではありません。
しかし、デジタル広告では、より簡単に効果検証が可能です。もちろん、全てを効果検証できるわけではありませんが、旧来の広告に比べればはるかに効果を検証しやすくなりました。これは、デジタル・マーケティングが広告業界に起こした、大きなブレークスルーと言えます。
デジタルマーケターは、マスマーケティングの分野からは「数値を見ているだけで戦略がない」と揶揄されることもありますが、実際には、より多くの数値を確認しながら、戦略的な視野を持つことができます。
マーケティング3.0――よりよい世界を作るために
世界でもっとも有名なマーケターであるフィリップ・コトラーは、自著の『コトラーのマーケティング3.0ソーシャル・メディア時代の新法則(』朝日新聞出版、2010年)の中で、ソーシャルメディアの時代に際し「、マーケティング3.0」という概念を提唱しています。
コトラーの定義するマーケティングの進化
マーケティング1.0
製品中心
大量生産・大量消費
1950~60年代
マーケティング2.0
消費者中心
価値の多様化
1970~1990年代
マーケティング3.0
人間中心
ヴィジョン主導
2000年代~
マーケティング4.0
自己実現
共創の時代
2010年代~
コトラーは、前述の自著の中でこのように述べています。
現在、われわれはマーケティング3.0、すなわち価値主導の段階の登場を目の当たりにしている。マーケティング3.0では、マーケターは人びとを単に消費者とみなすのではなく、マインドとハートと精神を持つ全人的存在ととらえて彼らに働きかける。消費者はグローバル化した世界をよりよい場所にしたいという思いから、自分たちの不安に対するソリューション(解決策)を求めるようになっている。
混乱に満ちた世界において、自分たちの一番深いところにある欲求、社会的・経済的・環境的公正さに対する欲求に、ミッションやビジョンや価値で対応しようとしている企業を探している。
選択する製品やサービスに、機能的・感情的充足だけでなく精神の充足をも求めている。
デジタルの世界においては、相互の影響力が強く働きます。つまり、多様な人々の価値観に応じて、意図しない形で評価される可能性がある、ということを頭に入れておく必要があります。
私たちは一方通行にメッセージを押しつけるのではなく、相互が影響力を持った時代に生きているのです。大きなパラダイムシフトが起きたことを認めなくてはいけません。
栄光なき起業家たち#2 十一月にかき氷屋を開いて二ヶ月で超速閉店。人気の料理研究家は何を学んだのか?
新井薬師前にあるオフィスで、料理研究家の五十嵐豪さんに話を伺いました。穏やかで、いつも笑顔を絶やさない人です。
「しかない料理」などを開発し、Twitter のフォロワー数も3万人を超えている大人気の料理研究家ですが、オープンした店舗を二ヶ月で閉店させた、という経験を持っています。
その理由を聞いたところ「かき氷屋を十一月にオープンしてしまった」からだそうです。
どう考えても明らかに失敗しそうな、「十一月のかき氷屋」をオープンさせてしまった五十嵐さんは、その失敗から一体何を学んだのでしょうか?
五十嵐さんは、二〇歳から料理研究家として活動されていますが、きっかけはなんだったんでしょう。
私、もともと公認会計士になろうと思って勉強していたんですけど。
ほう。
俺本当に公認会計士やりたいんだっけ、ということで一日だけ考えてみようと思ったときに、わーっとあこがれの職業、かっこいい職業書いていって、バリスタとか、俳優とか、ミュージシャンとか。
いろいろありますね。
全部やろうと思って。全部やるなら、カフェの中で俺は全部やろうと。
なるほど、店で演奏したりとか出来ますからね。
ただ、ちょっと料理人は違うなと思った時に、料理研究家という職業を知って。お店もなく、自分のやりたいことを自在にできると。
ということは、今の職業の出発点もカフェだったんですね。
そうなんですよ。なので、自分の中ではカフェは完了していたんですが。ときどき出てくるんですよ(笑)。
かき氷屋を開くことになったのは、どういうきっかけだったんでしょうか?
あるレセプションパーティーで、フェバーをやってるビルオーナーの方と話をしている時に、「僕もカフェ作るのが夢で、今の仕事をやってるんですよね」みたいな話をしたら、「やる?」って思いがけない軽さで言っていただいて(笑)。
何度か打ち合わせして、その方の持っているビルの二階を家具、内装をそのままで、やらせてもらうことになったんです。
その時は「来た!」って感じだったんでしょうか?
来ましたね(笑)。でも、飲食のオペレーションとか、立地選びとか、内装とか、全然わからないんですよ。これが。意外と料理研究家と飲食店経営者って、遠いんです。
料理を作る方ですもんね。
しかも、立地が選べる状況でもないので。
飲食店をスタートする人にとっては、多分立地ってすごく重要な情報だと思うんですけど、僕はそこはもう考えなくて、その場所で何が出来るかしか考えなかったんですよ。しかも人通りが割と少ないところで。
最初、オープンもなるべく早くしたいし、店も結構狭くて、そんなにキャパシティがないので、どういう業種がいいかなと考えていたんです。
でも、たまたまその夏にかき氷をプロデュースする仕事があって、業務用のかき氷機を買ったんですが、全然使わなかったんですね。
行き場をなくした業務用のかき氷機があるので、これを使おうと(笑)。
たまたま来た立地の話と、たまたまおいてあったかき氷機が合体して、かき氷屋さんが出来ちゃったんですね。
そしたら、いろいろ手間取ってるうちにオープンが冬になったんです(笑)
(笑)
失敗についてのトークで言うと、サビの部分ですよね、今ね(笑)
それにしても、なんでそんなに遅れたんですか?
そもそも、この話があったのが八月だったんですよ。
あ、そもそも結構遅かったんですね。
準備して九月か一〇月に、と思っていたら、十一月になってしまって、結局二ヶ月で店を閉めたという話ですね。
そもそも、どんなに頑張っても九月じゃないですか。勝算はあったんですか?
勝算、あったのかな……?
なかったんですか?(笑)
多分、勝算という感覚ではやってなかったんですよね。もともと料理研究家という仕事も、所持金四万円で未経験の時に始めたので、勝算あってやってないんですよ。
やりながら改善して最適化していくのは得意なんですが、そのための時間とか信用力がまだなかったんですよね。
小さく始めすぎたということでしょうか?
収容力がもっとあれば、リソースを投下すればリターンがあるんですが、十四席くらいの小さな店舗だったんです。
営業時間も六時スタートで十一時までだったので、そんなに大きく儲けられるわけじゃないんですよね。
オープンした後に、カレー屋をやってる友達に来てもらったんですけど、後から聞いたら家賃比率も高く、その時点で「あれは厳しいだろう」と思ったらしいです。
プロから見たら「これは駄目だな」とわかったわけですね。
見えないラインがあるんでしょうね。
かき氷、利益率は高そうですけどね。
利益率は高いですよ。それから、客単価も、一杯千円位では出してたので、そんなに悪くなかったんですが。
最近、食べてもあまりカロリーにならないということで流行ってますよね、高級なかき氷。
人が入るような導線とか、設計ができてれば、かき氷ってかなりいいと思うんですよね。
今だったらうまくいくんですかね?五十嵐さんの Twitter もフォロワーが増えてきましたし。
うーん、どうかなあ。普通に個人経営なら余裕で暮らせる収益は出てましたが、貸主と目標を決めていたんです。売上月二百万円で、家賃を二十万円納めるというところだったのですが、売上が二ヶ月目に月に七十万だったんです。
ただ、キャパシティを考えるとあの場所で月二百万円の売上は現実的ではなかったかもしれません。事務所にしたほうがいいよね、ということで貸主と話し合って解散しました。
立地が変なところに人が集まってるレストランもあるじゃないですか。熱狂的なファンがいるところとか。ああいうところはどうやって集客しているんでしょうか?
知ってもらっているということが重要ですよね。前の店からのファンがいたり、インフルエンサーがブログに書いてくれたり、メディアで取り上げられたり。
最近は美容室なんかも、奥まった場所にあっても結構集客できるじゃないですか。飲食店でも、しっかりと地に足をつけて集客すればかなり伸びると思います。
本業のお仕事をやりながらだと難しかったんでしょうか。
そうですね。六時に仕事を終えて店に向かって、十一時まで働いて帰って、また朝から会社の仕事をする、という形だったので、企画して何かを仕掛けたりする余裕がなかったんです。
結果として、本業の方も余裕がなくなってしまって、店の方も上手く行かなくなってしまって。
スタッフを入れても、全部任せられるわけじゃないですから、結局見ていなければいけないんですよね。
小さい店舗だと、オーナーが接客もすることになりますよね。
そうですね。でも、友達とか知り合いが来て、話をしていたりすると、アルバイトから「オーナーは私が働いているのに、遊んでばっかりだ」と言われちゃったりね。難しいんです。
結局、損害はあったんですか?
金銭的な損害はそれほどなかったですね。というより、儲かっていないのを知った貸主の方が家賃を払わなくていい、とおっしゃってくださったんです。
総合的に見れば、リターンのほうが大きいですね。貸主の方には本当に感謝しています。
いい経験、ということですかね。
ネタは一生話し続けられますからね(笑)。
こういう話は飲食店の方だったら言いづらいと思うんですけど、私は本業が料理研究家なので、話せるんです。
それから、経営として飲食を経験したことも、料理研究家としては大きかったです。
実際にやってみてわかったことはありますか?
事前のリソース注入量は確保しないと駄目だな、というのはよくわかりました。プロモーションも含めて仕込みがものすごく重要なんだな、と。
もう一回やるとしたらどうしますか?
同じような条件なら、お店のキャパシティをもう一回確認しますね。小さい店舗って、一人で生活していくにはちょうどいいと思うんですよ。ただ、他に任せられる人がいないという状況だと、ちょっとやらないですかね。
個人事業が推奨の規模があるんだなっていうのはわかりました。投資したものに見合うキャパシティがないと、投資過多になっちゃうか、全然投資が出来ないんです。
客単価が凄く高いか、ある程度席数が多くないと厳しいんですね。
席数が少ないと、何かしらの付加価値がないと厳しいですよね。そうなると、やっぱりアルバイトの学生にやってもらうわけにはいけないんですよ。私が本業をやりながら、という想定に、そもそも無理があったんです。
売上的には結構頑張った方ですけど、店をやってる間に会社の案件を進めたほうがいいですよね。想定していたよりも膨大な時間がかかりました。
他に気がついたことはありますか?
飲食店の採用の難しさですかね。アルバイトの方は紹介してもらったんですが、常勤の方は取れなくて。都内だと本当に採用は大変ですね。
後輩の起業家や、飲食を志す方にメッセージはありますか?
とりあえず「やってみたほうがいい」とは思います。得るもののほうが多いですから。自分が体験したことのほうが、意見として強いので、それが営業の強みにもなるんです。
ただ、身の丈に合わない投資をして倒れるのは、少し考えたほうがいいと思います。最近は間貸しの飲食店なんかもあるじゃないですか。夜はバーで、昼間は別の店、みたいな。そういうことを経験してからやったほうがいい。
リスクの少ないところから経験を積んだほうがいい、と。
儲からなくても絶対にやったほうがいいです。
状況とか立地とか、場所によってもぜんぜん変わるので、リハーサルだと思って、そういうことをやってから、飲食の世界に飛び込まれたほうがいいです。
他になにかありますか?
FXで会社のお金をほぼ全部溶かした話とか、会社を週休五日にして大失敗した話とかありますけど、聞きます?
いや、今日はやめておきます(笑)
起業家の教え #2
- 挑戦するときは段階を踏んで!リスクを少なく挑戦しよう。
- 投資するときは、その投資に見合うキャパシティがあるかを確認しよう。
- 付加価値が高いことは人には任せられないかも。何が委任できるか見極めよう